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耐久性の低いポンジ製「のぼり」が不動である理由


https://ja.wikipedia.org/wiki/幟#/media/File:Sekigahara_Kassen_Byōbu-zu_(Gifu_History_Museum).jpg

日本の伝統的プロモーション手段「のぼり」
日本には「のぼり」という伝統的情報メディアがあって、広告やイベント時の常套手段として用いられ続けている。
日本人にとっては、それが極めて当たり前に存在しているため、もはや世の常識的な感覚にすらなるのだけれど、実は「のぼり」は日本独特のもので、他の国には無い。

意外に知られていないのだけど、「のぼり」は漢字で書くと幟。決して「登り」や「上り」ではなくれっきとした一つの製品の名前なのである。
英語で訳せばflag、つまり一般的な旗となってしまうので、やはりこれは幟は日本固有のものであることが確認できる。

ちなみにタイあたりでは、日本企業も多く進出していることから、この縦型フラッグである幟をあえて日本のテイストを出すために用いるケースもあるのだが、この場合もやはりJ-flagと呼んだりしている。

特に定義は無いようだけれど、ウィキペディアによれば、

日本における旗の形式のひとつ。長辺の一方と上辺を竿にくくりつけたものを指す。

となっている。つまり、縦長の長方形の旗で、L字型のフレームに上部と左右の一片が括りつけらている形状のもののことを指すだけである。

このお馴染みの幟、飲食店やガソリンスタンド、特に街道沿いの店舗については見ないことがないほど、広く一般的に使用されてのだが、ボロボロかつすっかり色あせたまま放置されている場合も非常によくある。

なぜそうなってしまうのか。

理由は、「のぼり」は日本の伝統的な「幟」だからである。
はぁ?

では、幟とは何なのか。

日本ならでは伝統「のぼり」=幟の実体
かつて我が国の戦国時代に、敵と味方の識別をするためのサインとして用いられた旗が幟なのである。
そして、ひらひらと風になびき、士気高揚としても効果もあったと思われる。

合戦に置いては、それぞれの武士が背中に刺す、あるいは手に持って使用していたはずで、移動しながら使用される部分が多かったはずである。

ということは、それを持っている武士が倒れてしまうと、そののぼりも地面に落ち、馬や人に踏まれまくってくしゃくしゃになったはず。
そうなってしまうと、合戦が終わった後それを持ち帰り、洗って再利用するようなことは非合理的に過ぎるため、恐らく放置しておかれたであろう。
そう。つまり、使い捨てのものとして使用されていたに違いない。

言い方を変えれば短期かつ単発利用。
一回の合戦が終われば、増刷をしていたに違いない。


https://ja.wikipedia.org/wiki/幟#/media/File:Sekigahara_Kassen_Byōbu-zu_(Gifu_History_Museum).jpg

現在の「のぼり」も、基本的には幟の伝統を引き継いでいるので、短期の単発利用として利用されるニーズに合致したように製造される。
使い捨てで利用するアイテムなどには、なるべく金をかけたくないわけで、耐久性やクオリティなど二の次、早く出来て安ければオッケー!というコンセプトの製品になる。

従い、のぼりは本来、短期のセールスプロモーションとして利用するには最高に適しているのだけれど、ラーメン屋の前に置くような、ある程度長期的に使用される目的については、全く適していないのである。

その本来の目的と性質を無視し、長期的に利用する看板の代わりとして使用したりすると、3ヶ月もすると何やら端がビロビロにほつれ、色が日焼けで白っちゃけた「味じまん!」みたいな説得力のない布切れば店頭にぶら下げられ流ことになってしまう。

「だってそういう物なんだからしょうがないじゃん」

というのが、大半ののぼり使用者の意見と思われるが、実は日本国外に目を向けると現実的には違っていて、ヨーロッパあたりでは、半年〜1年間レベルの中期間、色あせもホツレもなく使用される素材が当たり前に使われる。

そもそも使い捨てだからなるべく安く
日本の「のぼり」には、先に説明したような機能と目的から、なるべく安い生地が使われる。それがポンジである。なんだかちょっと可愛いような名前だが、英語表記はponjee。これも生地の世界ではどこでも使われる一つの素材名である。

ポリエステルの繊維を、縦糸と横糸だけでおられた織物で、構造としてはガーゼのような模様をしている。つまり、製造が簡単なので、原材料としても非常に安い価格で流通している。
しかも非常に軽く、またある程度印刷が裏写りもするため、旗竿につけた際にひらひらする感じには適している素材と言える。

しかしながら、この構造だと非常に耐久性が低い。ハサミで切れば、切った先からどんどん糸がほつれていくので、切った後は縫製をかけないと、あっという間にボロボロになる。

ただ、縫製をかける加工賃もコストアップになってしまうため、実際に短期目的の場合の使用には、ヒートカットと呼ばれる端を熱で溶かす簡易なホツレ防止を施す手法が頻繁に用いられる。

通常の大手コンビニチェーンの前に設置されているのぼりは、通常2週間の使用で次々取り替えるため、高い迅速性と低価格を理由に、ほとんどの場合、このポンジ+ヒートカットの手法が採用されている。

しかしながらこのヒートカットも、風になびいてパタパタやっている間に溶かしてある辺のホツレ防止効果も剥がれてしまい、屋外に出しっぱなしの場合は1週間程度でホツレが始まってしまう。
特に、旗が最もなびきやすい下の角は、2週間も経てばほとんどの場合ガサガサになっている。

キチンと縫製をかけると、それが起きることはない。したがって、少し長い期間使うことを予定する場合は、必ず縫製加工をしたものを使用しないと、あっという間に無残な状態になってしまう。

では、ポンジのぼりも縫製加工をしていれば完璧?
残念ながら、それほど話は簡単ではない。

画像を見れば明らか。耐久性の低い素材の構造
なぜならポンジは、根本的に耐久性が低い構造をしているからである。

画像は、ポンジ素材を拡大鏡で見た絵である。
綺麗に縦と横の糸で織られていることがわかる。

こういう構造をしているため、例えば何かに当たって少しでも傷が入ると、そのまま風圧を受けただけでそこからどんどん裂けて行ってしまうのである。

また、あまり風によるパタパタの頻度が多いと縫製自体も崩壊し、ホツレが始まる。

やはり、根本の生地を弱さは、後でフォローをしても限度があるということである。

それに対して、次の画像。

ヨーロッパあたりでは、基本的にこのような素材が使われ、ポンジはほとんど使われない。
画像の構造を見てわかるように、ニット素材、つまり編み物である。
3方向に糸が複雑に絡み合っているため、ハサミで切っても切った先からホツレてくることはない。つまり、耐久性が高いのである。しかも、インクを乗せた時の色落ちがしにくく、また生地全体の風合いが良い。

このような素材は、間違いなくポンジよりも原材料としては高価である。
ではなぜわざわざ高価な素材を利用するのか?

答えは、日本国外においては基本的な用途がブランディングだからである。

街道を飾る、公園を飾る、店頭を飾る、街全体をラップする。
つまり、メッセージを伝えると同時に、ものやサービスの価値を増大する一つのアイテムとして用いられているのである。

したがって、大前提として、永く美しく対象物を見せるための素材でなければ意味がないのだ。

生地メディアの賢い使い方は姿は使い分け
では、日本はこのニーズは無いのだろうか?
そんなわけは無い。
近年定番化してきている、ビーチフラッグやドロップ型の言わば「変形のぼり」の需要は、そのニーズの具体的な現れであるに違い無い。
あれらの「変形のぼり」は、通常のポンジ製のぼりよりもかなり高い。
部数にもよるが、一般的な価格感としては5倍〜10倍くらいのはずだ。それでもそれが増加してきているのは、幟ではダメな理由があり、それがブランディング目的ということになる。

まとめると、短期使用、基本機能はサインと賑やかし、安ければ安いほど良い、耐久性はどうでも良い、というニーズにはポンジ製「のぼり」は最高である。このセールスプロモーション手法は、日本が世界に誇るものと言えるかもしれない。

一方、長期利用、綺麗あるいはカッコよく見せる、ある程度耐久性が必要、となった場合のニーズには、ポンジ「のぼり」は全く適していない。
価格は、単品で比較するとポンジ製品に比べてニット素材は1.5-2倍くらいの価格と思われるが、本来の目的に全くフィットしないこと、取り替えを含めたライフサイクルコストを考慮すれば、ポンジ製品使用の選択肢は本来ない。完全に目的に対するソリューションが矛盾していることになってしまう。

つまり、目的による使い分けが賢い選択ということになる。

それを前提に考えた時、我が国の最大の問題は、サプライヤー自体がそれを理解せず、市場に紹介を出来ていないことだ。